建築の仕事を始めてから、初めて施工図というものがあることを知りました。
実際の仕事の現場では、いくら建築系の学校を卒業して、建築のことをいろいろ学んでいても、「こんなの学校で習ったっけ?」と言いたくなるくらい、知らない、わからないことは、よくあることですよね。
私も学校を卒業したばかりの若かりしころ、なんでも知ってるような偉そうな顔をしていたのに、まさかの施工図の存在に、「こんなの知らないぞー!」っと、ちょっとしたショックを受けましたよ。
そんな私のような「施工図って何なのよ?」と言いたくなる方に、施工図と設計図はどう違うのか、書いていきたいと思います。
設計図とは?
設計図とは、設計者が施主や検査機関に向けて作成するものです。
施主には、この設計図をもとに、計画内容を確認してもらいます。間取りや、設備、仕様などです。
注文住宅を建てたことのある人は、イメージしやすいかもしれません。自分が「こんな家に住みたいなあ」と漠然と思っていたことを、設計図として表現してくれるのです。
その中には、「リビングは南向きで、窓の高さはこれくらい」とかいうことはもちろんですし、クローゼットの棚の幅や、コンセントの高さ、エアコンの取付位置など、今まで考えていなかった細かなことまで含まれます。
これがないと、施主の頭の中にあるなんとなくの漠然としたイメージが、実際の建物に反映させるのがとても難しくなるのが、わかるかと思います。なので、いちいち細かなところまで、数字や形で図面として、表現して、「これでいいのか?」を確認していくのです。
また、検査機関にとっては、建築基準法をはじめとする法律や基準の仕様に沿った建物であるかを審査するために必要なものとなります。この審査に通らないと、建物が建てられないので、設計内容を変更する必要も出てくるでしょう。
施工図とは?
では、施工図はというと、施主や検査機関からOKをもらった設計図をもとに、施工するために必要となる図面です。
よく学生の頃は、建つことの決してない、ただの計画だけの設計をしたりしますが、そんな範囲では、考える必要のないことかもしれませんね。実際に施工するとなって、初めて必要になる図面です。
施工図として、これが必要という決まりはあまりなく、施工するにあたって、それぞれの現場ごとに、設計図で足りない部分について、施工図を作成するという感じです。
設計図に表現されていない細かな形状や数値など、詳細部分で、施工する人が必要になる図面です。これにより、施工で必要になる材料や工具の数や位置などがはっきりとして、実際の作業が、スムーズに行えるようになるのです。
施主が見るわけでもない、検査機関の申請に必要なわけでもないのであれば、「適当でいいんじゃないか?」と言いたくなるかもしれませんが、ここでしっかりと施工図を作成し、確認しておけば、あとあと作業する時に、一人一人の作業員にも共通の意識が持て、結果的に、正確で、設計図通りの建物が完成されるわけなのです。
「急がば回れ」ですので、手間がかかりますが、とても大事な作業になるのですね。
設計図と施工図の違いは?
では、設計図と施工図の違いは何かと言えば、「誰が、何の目的で使うのか」と言えるでしょう。
設計図は施主や検査機関向けに、建物の内容チェックのために作成するものですが、施工図は、現場の人が、施工するために作成するものです。
施工図は誰が作成するのか?
設計図をもとに、施工図を作成してくれる業者も多くあります。正直、出来上がった施工図の仕上がりは、業者によりさまざまで、問題なく施工できるものもあれば、とてもこのままでは施工できないというようなレベルのものもあるようですが…。
しかし、地場ゼネコンの場合は、現場の規模が小さいこともあり、自社で施工図を作成することが多いのではないでしょうか。もしくは、協力会社が、自分たちが作業するのに必要な図面を自社で作成することもあるでしょう。
いずれにしても、この施工図を読めるようになる、書けるようになることが、施工管理者としては、必要になることでしょうね。
まとめ
1.設計図は、施主や検査機関に向けて作成するもの。
2.施工図は、施工する人に向けて作成するもの。
3.設計図と施工図の違いは、「誰が何の目的か使うか」。
4.地場ゼネコンでは施工図は自社か協力会社で作成する。
学生や現場経験のない方には、あまりなじみのないかもしれない、「施工図」について、「設計図」と比較しながらまとめてみました。
私も、まだまだわからないことが多い施工図ですが、設計図には表されることのない、施工図だけにある世界。これが、過酷とも言われる、施工管理者や、現場作業をする人たちにとっての建築の魅力なのかもしれませんね。
「施工図ってなんだ?」という方に、少しでも参考になればうれしく思います。